先月、山形県や秋田県では大変な豪雨被害がありましたね。
テレビ画面に映る被害状況を見て、とてもショックでした。
この春に訪れた山形県酒田市は、地元の方々の善意に助けられた、短くも温かな旅だったのです。
それだけに今回の被害は気になっています。
今回はその旅の思い出についてです。
(写真)酒田の代表的な観光スポット「山居倉庫」のケヤキ並木
始まりは悪天候から
酒田市では一日観光を予定していました。
前夜に到着し、翌朝は酒田駅前からスタート。
市の中心部は、徒歩で観光をすることができます。
ところが、当日はあいにくの悪天候。
朝から雨だけでなく、かなりの強風が吹いていました。
観光向けのコミュニティバスもありましたが、本数が限られており、タイミングが合いません。
事前に観光案内所でもらった地図を頼りに、とにかく歩いてみることにしました。
風雨はまったく弱まりそうにありません。
強風で飛ばされそうな傘にしがみついて中心街を目指します。
とても地図をみながら歩ける状況ではありませんでした。
ありがたいお申し出
しばらく歩くと住宅地に入り、正しい方向に進んでいるか自信がなくなってきました。
「ここ、どこだろう?迷ったかなあ??」
あたりを見回しました。
すると、近くの住宅でガレージのシャッターを下ろす若い女性の姿がありました。
目的地の方向を聞こうと思い、声をかけると、
「えーっ!ここからだとまだだいぶありますよ」と、女性は驚いた様子。
「バスのタイミングを逃したので、歩いていこうと思って…」と苦笑いの私。
すると「車、乗っていきますか?そっちの方へ行くので」とありがたいお言葉が返ってきました。
見ず知らずの者を乗せていただくのも申し訳なく、躊躇しましたが、
「私だったら歩きませんよー。どうぞ!」
と快く言っていただき、ご好意に甘えることにしました。
10分ほどの車中でしたが、初対面にもかかわらず途切れることなくお話しました。
どこから来たのか、どこを訪れる予定か、食べたい酒田グルメなど。
寺町や市の中心街を通りかかった時には、女性はさりげなく観光案内をしてくださいました。
その間も雨脚は強くなり「これは…歩いていたら大変だっただろうな」と思いました。
目的地の観光施設に着くと、女性に心から感謝をしてお別れしました。
またもや助け船が!
普通なら、そのような機会は1日に一度きりと思いますよね。
ところが、次の観光地でも、乗せてくださる地元の方がいらっしゃったのです。
その時はバス停を聞かねばと思い、その観光施設の職員らしき方に声をかけました。
すると「私、地元のガイドなんです。雨も降っていますし、近くですから車を出しますよ」とおっしゃるではありませんか!
外に目を向けると、いまだ風雨が吹き荒れています。
「この天気では、バス停まで歩いて待つのはかなり大変だなあ」という思いが頭をもたげ、
ついお言葉に甘え、乗せていただくことにしました。
さすが地元のガイドさんです。
10分弱ほどの車中で、酒田の観光情報を盛りだくさんでお話してくださいました。
目的地まで、あっという間に到着。
同じ日に旅先で2回も車に乗せていただくなんて、これまでなかったことです。
それだけに地元の方々の善意がとても身に沁みました。
自分の中で酒田の印象が爆上がりしたのは言うまでもありません。
油断は禁物、でも善意に感謝!
もちろん、旅先で不用意に車に乗せてもらうことをお勧めしているわけではありません!
日本国内でも、危険な場所はたくさんあります。
けれど今回、最初にお二人に声をかけたのは私の方です。
そして、これまで一人旅を重ねて身に付いた判断力から、無意識に声をかける人を選んでいたのかもしれません。
とはいえ、旅に過信は禁物です。
振り返れば、その日は人のご縁に恵まれ、運も良かったのだと思います。
酒田に届け!
思わぬかたちで酒田の方々の善意に触れることができ、とても感謝しています。
ただその時、私はお二人のご好意に何もお返しすることができませんでした。
もちろん、お別れする直前までいろいろと考えました。
「こういう時、いくらかお支払いするのがいいのだろうか?」
「…でも、それでせっかくのご好意を台無しにしてしまったら?」
「そもそも、どのくらいの金額なら失礼にあたらないのだろう?」
考え過ぎて、お礼を伝える以外、結局何もできませんでした。
だからこの記事を通して、私が体験した酒田の人の温かさを伝えることにしました。
どうか、酒田の人も街も今回の大雨被害から一日も早く回復できますように。
そして今後も多くの訪問者が酒田の温かさに触れ、美しい風景を楽しめますように。
きっとまた、伺います。
(写真)酒田の海の幸に舌鼓