数年前、下関に一人旅をした時、素敵な部屋に一泊できました。
自分にとってはとても思い出深い部屋です。
関門海峡が一望できるオーシャンビュー。
ドアを開けるなり、「わあ」と声を上げてしまいました。

夕暮れになると、近くの観覧車がライトアップされました。
部屋の電気を消し、ベランダでただぼんやりと夜が更けていくのを眺めていました。
現地で買ったお酒を片手に、何も考えず過ごす時間は本当に贅沢なものでした。

こんなひとときがあるからこそ、一人旅はやめられません。
気がつくと夜空には月が浮かんでいました。
海峡からの風が心地よく、幻想的でもありました。

目の前に広がる関門海峡は古くより本州と九州をつなぐ海峡。
12世紀、「壇ノ浦の戦い」があった場所としても有名です。
隆盛を誇っていた平家一門が源氏に敗れ、滅亡した歴史的な戦いです。
平清盛の孫で、わずか8歳の安徳天皇が一門とともに入水した痛ましい歴史も刻まれています。
けれど、そんな悲劇的な地も今と変わらない、美しい海峡だったに違いありません。
因果なことに、心動かす自然の美しさに泥を塗ってしまうのは、人間の争いです。
「諸行無常」
「夏草や兵どもが夢の跡」
海沿いを歩きながら、平家物語の有名な一節や芭蕉の句がなぜか思い出されてしまいました。
海峡といえば、いま世界の注目を集めているのが中東のホルムズ海峡。
話題になる以前は、巨大タンカーがたえず行き来する要衝というイメージしかありませんでした。
けれど、何度も流れるニュース映像から、鮮やかな青が印象的な海だということを知りました。
その青を、ただ美しいと思いました。
実際、自分の目で見てみたくもなりました。
そんな場所で、いまだくすぶる諍いはとても悲しいことです。
時代も場所もまったく違う二つの海峡を思い、平和の尊さをかみしめます。
