『点と線』、『ゼロの焦点』、『砂の器』といえば…
言わずと知れた国民的作家、松本清張の長編推理小説の代表作です。
何度も映画・ドラマ化され、知らない人の方が少ないくらいですよね。
子どものころ、両親が松本清張原作のドラマをよく観ていた記憶があります。
「人の心のひだまで描いた作品」と言っていました。
意味はよくわからなかったけれど、子ども心に面白い表現だと思いました。
時が経ち、社会人になってから改めて清張作品に注目するようになりました。
推理小説だけではなく、日本の戦後史に関する作品も興味深いと思いました。
学校の授業では教わらなかった歴史の別の顔が見えてきます。
私にとってはそれが新鮮であり、また怖さとミステリーに満ちたものでもありました。
「松本清張記念館」が北九州市にあることを知り、行ってみたくなりました。
6月某日、ついに福岡県北九州市小倉の記念館を訪れました。
今回はその訪問についてです。
小倉の街並み
北九州市小倉は松本清張の郷里です。
松本清張記念館は、清張の生前の功績を語り継ぐことを目的に建てられました。
小倉駅から徒歩20分前後かかります。
途中、商店街や小倉城を通るので、徒歩でも退屈はしません。
小倉駅前から路線バスでも行けるようですが、天気がよければ歩いて行くこともお勧めです。
駅を背にして右手に少し歩くと、小倉中央商店街に入りました。
アーケードになっており、雨だったとしても心配ありません。
商店街の路面には小倉城方面への表示もあります。
初めての訪問者にも優しい工夫がされていると思いました。
商店街を通り抜け、紫川の向こうに小倉城が見えてきます。
まずは立派な石垣に圧倒されました。
まさに小倉のシンボルともいえる立派な城郭です。
この日は石垣を手入れしている職員さんらしき姿もあり、立ち止まってしばし見ていました。
松本清張記念館へ入館
松本清張記念館は、小倉城とほぼ同じ敷地内にあります。
受付では、記念館だけでなく小倉城、小倉城庭園との3施設共通券も購入できます。
「せっかく来たのだから…」と一瞬迷いました。
でも、今回は記念館が目的だったので記念館のみを選択しました。
記念館は600円、3施設共通券にすると700円なので、時間のあるときは後者がお得です。
記念館の展示室は二つに分けられています。
まず一階の入り口から入って左側に、約700冊といわれる清張作品の展示に圧倒されます。
天井まで届く多さで、上の方は見えません。
これだけで圧巻です。
そしてそのまま右を向くと、東大寺の礎石がありました。
東京都浜田山のご自宅から運び入れたそうです。
歴史ファンとしては、別の驚きをもって見入ってしまいました。
さらに中へ進むと、巨大な年表や清張作品をジャンル分けした解説や展示がありました。
このフロアだけで、松本清張という国民的作家に詳しくなれそうです。
さらに奥にはオリジナル映像のコーナーがありました。
この時は『日本の黒い霧』を題材にしたドキュメンタリーを上映していました。
1回の上映時間は1時間20分で、一日五回上映されているようです。
10席ほどしかない狭いスペースですが、いつから入っても鑑賞可能でした。
私も上映途中から入ったのですが、若い男性が一人で鑑賞していました。
内容は敗戦後の日本で起こった重大事件に関わるものです。
敗戦後の日本に対する松本清張の独自の視点が興味深く、全1時間20分を鑑賞しました。
私の後からも女性グループが入場してきましたが、しばらくして退席していきました。
正直、楽しく盛り上がれる内容ではありません。
友人同士で観るには、ちょっと重たすぎる話だろうな、とも思いました。
二階は松本清張が昭和30年代に住んだ東京・下高井戸の自宅をそのまま再現しています。
大作家の机の上をじっくり見る機会などこれまでなかったので、ひたすら感動でした。
そして書斎のほか増築を重ねたという本棚もものすごい数の蔵書です。
訪問を振り返り…
気づくと3時間近く展示を見ていました。
館内には「清張カフェ」という飲食店があります。
ぜひそこで一休みしていきたかったですが、残念ながらすでに閉店後でした。
再び歩いて小倉駅へ戻る途中、小倉城付近のカフェに立ち寄りました。
夕方近く、あまり人のいない店内で抹茶フロートを片手に一休み。
その日一日を振り返りつつ、近いうちに清張作品をじっくり読んでみたいと思いました。